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お役立ち情報コラム

今月の特集 (2017年11月)

    
  自然の恵みに感謝
   ~『ジビエ料理』で地域の魅力を伝える~
  


 秋冬にシーズンを迎えるジビエ料理は、全国的に人気が高まっている食の楽しみの一つ。その普及は、農村の鳥獣被害対策や、地域活性化に貢献できる取り組みとしても注目されています。ジビエ料理の現状とその課題とはどういうものか、有識者に伺いました。

 共存共栄の鍵はジビエに


 野生鳥獣は、古来より山間地域で「鹿刺し」や「ぼたん鍋」など、地域の食文化として食べられてきた歴史があります。それが近年は、都市部を中心としたグルメ層に、フレンチの技法をベースとしたジビエ料理として人気が上昇。現在はその状況が一段と広がり、ジビエがより身近な料理へ変わろうとしていることをご存じでしょうか。  背景にあるのは、狩猟で取った野生鳥獣の食肉利活用推進です。「きっかけは、地域の農家さんが鳥獣被害で困っていたことでした」。そう話すのは、信州・蓼科高原で地産地消のオーベルジュ「エスポワール」を営み、現在はNPO法人日本ジビエ振興協議会代表も務める藤木徳彦さん。  「蓼科は、春は山菜、夏は色とりどりの野菜、8~10月は天然のきのこに恵まれた地域。しかし11月以降は冷え込みが厳しく、11月末~4月の間は休業する店もあります。一方で、狩猟が解禁されるこの季節は、地域の方々が取っていたシカやイノシシなどが食卓に上がる季節。調べてみると、信州は野鳥も含めて地域で素材がそろう。ならばフランス料理の旬の味覚でもあるジビエ料理を、冬のごちそうとして提供しようと考えたのです」

 グルメの嗜好(しこう)品から地域の味覚へ

 
 こうした事情は、日本各地の山間部や農村にも共通すること。藤木さんは、全国でジビエの調理法と活用法を説く伝道師となり、2012年、有志と共に日本ジビエ振興協議会を設立します。  増加する野生鳥獣が適正頭数に近づくこと。鳥獣被害で苦しむ農家が減ること。狩猟で取った野生鳥獣が利活用されること。山間地域の地域振興に貢献すること。新しいおいしさを多くの人に提供できること――。さまざまなメリットがあることから、ジビエ料理に対する取り組みは各地で始まり、ここ数年で着実に進化を遂げてきました。多くの人々に気軽に試してもらうため、エキナカのハンバーガーショップで「鹿肉バーガー」を提供したり、さらにジビエのカレーやハンバーグなども作られるようになり、岡山県や和歌山県など、自治体を挙げての利活用の動きも広まっています。



〈信州ジビエ 鹿と真ガモのパナシェ 蓼科産摘みたて野菜添え〉
弱火でソテーしたシカ肉のロース(左記写真左)、マガモの胸肉をオーブンで焼いたロティ(同中)、マガモのささ身を低温の脂で加熱したコンフィ(同右)の盛り合わせ。それぞれの部位に合った調理法でおいしさを引き出します。

 ジビエを地域産業にするための課題とは

 しかし、草の根的に発展してきた取り組みには課題も残されています。「まずは衛生ガイドラインの問題です。現在ジビエは各県がそれぞれ制定したガイドラインに即して解体されていますが、それが全ての県で制定されているわけではありません。また、野生獣は捕獲後の処理方法について明確な決まりがなく、血抜きが十分ではなかったり、不適切な取り扱いによって『ジビエはおいしくない』という誤解を招いていることも。それとともに、技術を持った解体処理施設の建設も望まれています」。そう話すのは同協会監事・鮎澤廉さんです。  一方で、これらの課題を解決するべく、厚生労働省はジビエの衛生管理の指針作りを推進。肉を解体する器具の扱い方、内臓の処理方法、殺菌・加熱の基準などについて検討し、狩猟シーズンが本格化する11月ごろまでに食の安全を確保する方針を打ち出しました。  環境省は増加する野生鳥獣の捕獲事業を強化するため、鳥獣保護法を改正。10年以内にシカやイノシシの個体数を半減させる目標を掲げるなど、国を挙げての動きが加速しているのも見逃せません。  「野生鳥獣の食への活用を定着させるためには、公による取り組みが不可欠。協議会も、ジビエに適した調理法である真空低温調理を用いた加工品の開発や、狩猟者向けのハンドブック制作、イベントの実施などに取り組んでいく方針です」と鮎澤さん。多くの人がジビエのおいしさに触れるよう、正しい知識と共にその魅力を広める取り組みは続きます。
 

                




                  〈鹿もも肉のスモークハム〉






お話を聞いた人
 藤木徳彦(ふじきのりひこ)さん(日本ジビエ振興協議会代表・内閣官房地域活
 性化伝道師・オーベルジュ「エスポワール」オーナーシェフ/写真左)
 鮎澤廉(あゆざわれん)さん(日本ジビエ振興協議会監事/写真右)




オーベルジュ「エスポワール」
〒391-0301 長野県芧野市北山蓼科中央高原
tel&fax:0266-67-4250


NPО法人 日本ジビエ振興協議会
ジビエ料理の普及によって増え続ける鳥獣被害を減らし、
地域の活性化や6次産業化の実現を目的に、2012年に設
立。
野生鳥獣の捕獲、加工、流通、調理、情報発信、交流促
進に取り組んでいます。 
〈連絡先〉
 NPО法人 日本ジビエ振興協議会 事務局
〒341-0042 埼玉県三郷市谷口677-1
TEL 048-951-0123
MAIL gibier@m.jcnnet.jp
URL http://www.gibier.gr.jp 

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