お役立ち情報コラム
生活に役立つ情報や営農情報をお届けします
家庭菜園・家庭園芸 2023年4月
私の食育日記 野菜の細胞を壊してみよう
最近息子が、気軽に料理を手伝ってくれるようになりました。お手伝いをしてくれるといっても目が離せず、散らかし放題で逆に時間がかかる幼児期と違って、小学生のお手伝いは本当に時短になって助かります。息子は以前、タマネギを切って涙が止まらなくなる経験をしてから、まず「タマネギも切る?」と聞いてきます。切ることを伝えると、水泳用ゴーグルを着けて登場。いつも笑ってしまいます。
そもそもどうしてタマネギを切ると涙が出るのでしょうか。切ることで細胞が壊され、辛味成分にタマネギが持つ酵素の力が働き、涙を出す成分を放つからです。この辛味成分は、消化を助けたり、血液をさらさらにしてくれたり、本当は体に優しい成分です。タマネギ以外にも、ニンニクやネギ類にも含まれていて、ニンニクは刻んで細胞を壊すほど、香りが強くなります。
細胞を壊すといえば、あるとき、私が、ミニトマトを野菜室へ入れたつもりが、一つ上の段の冷凍室に入れてしまいました。それに気付いた子どもが「ママ、間違えてるよ!」と野菜室へ戻してくれたのですが、解凍された頃にのぞくと、ミニトマトはぐちゃぐちゃに。それを見て「大変、トマトがもう傷んでいる」と子どもたち。そこで、冷凍すると細胞壁が壊れてしまうので、解凍しても元には戻らないことを説明しました。「もう食べられないの?」と悲しそうな2人に、崩れたミニトマトの皮をむいて、スープを作りました。細胞が壊れたトマトは、加熱するとすぐにスープとなじむので、生のトマトより加熱料理には使いやすいのです。他にも、ダイコンも余ったときに冷凍して細胞を壊しておくと、煮物にするとき短時間で中まで味が染みます。
子どもたちは「細胞を壊して、良いこともあるんだね」と納得していました。
岡村 麻純(おかむら ますみ)1984年7月31日生まれ。お茶の水女子大学卒。大学で4年間食物科学を学び、食生活アドバイザーなどの資格を持つ。
野菜もの知り百科 グリーンピース(マメ科エンドウ属)
エンドウは硬莢種(フィールドピー)と軟莢種(ガーデンピー)に分類されます。硬莢種は子実を煮豆やあんなどに利用します。軟莢種には若いさやを食べるサヤエンドウと、未熟の豆を食べるグリーンピース(実エンドウ)があります。エンドウの花はスイートピーと同じ蝶形花で、硬莢種は赤色、軟莢種は白色が多いようです。
グリーンピースはさやが食べられないので、ちょっと損をした気持ちになります。スナップエンドウを栽培すれば、サヤエンドウとしても実エンドウとしても利用できます。
エンドウの原産地は南西アジアで、黒海経由で欧州に伝わり、新石器時代にはすでに栽培されていました。完熟種子をもっぱら利用していましたが、13世紀にフランスでさやを食べる品種が開発されました。16世紀には未熟の豆を食べるようになり、18世紀に米国でグリーンピースが広く普及しました。
19世紀にはオーストリアのメンデルが、対立する特徴のあるエンドウを掛け合わせて、顕性の法則、分離の法則、独立の法則の三つの遺伝の法則を発見しました。顕性の法則は優性の法則とされてきましたが、「優性」「劣性」は誤解を招く恐れがあるので「顕性」「潜性」と表記するようになりました。
一般に豆は種子として次世代を育てるので、カリウムやリンなどミネラルを多く含み、栄養価が高いです。食物繊維も多く、特にグリーンピースは野菜の中ではトップクラスで、ゴボウよりも多いです。食物繊維は発がん物質の排出によって、がん予防の効果もあります。
缶詰や冷凍のグリーンピースは一年中食べられますが、独特の香りが楽しめるのは晩春から初夏に取れる生豆です。旬の新鮮なものはとても美味です。和洋中の料理に使えます。子どもはおいしい豆ご飯だと何杯もおかわりします。さやむきのお手伝いと、家庭の味は一生の思い出です。
藤巻久志/種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。
あなたもチャレンジ! 家庭菜園 ラッカセイ ゆでれば甘く、煎れば香ばしい
ラッカセイの根には、根粒菌が共生し、空気中の窒素を植物に供給するため、窒素の少ない土壌でも生育できます。温暖地では種まき適期は5月中旬~6月中旬です。
[品種]
ゆで豆向きには、早生の「郷の香」、晩生の「おおまさり」などがあります。煎り豆向きで晩生の「千葉半立」、中生の「ナカテユタカ」、やや早生で最近育成された「Qなっつ」があります。
[畑の準備]
事前に1平方m当たり苦土石灰150gを菜園全体に散布して耕しておきます。深さ20~30cmの溝を70~80cm間隔で掘り、溝1m当たり化成肥料(NPK各成分10%)100gと堆肥2kgとを施し、土とよく混ぜ、溝を埋め戻します(図1)。窒素が多過ぎると「木ぼけ」し、実の付きが悪くなるため、野菜の後作では肥料を控えめに与えましょう。
[種まき]
土を盛り上げて幅30cm程度の畝を立て、種は25~30cm(「おおまさり」は50~60cm)の間隔で2粒まきます(図2)。鳥よけは、トンネル状にネットを掛けるか、不織布でべた掛けをします。また、釣り糸を上部に張ると、カラスは羽が糸に触れることを嫌うため、飛来を防ぐことができます。なお、畑の都合や鳥害回避のために、小型ポットで本葉2枚くらいまで育苗をしてから植え付けることもできます。
[灌水]
発芽までは十分与え、その後はやや乾かし気味にしますが、夏の乾燥は実の太りに影響するので灌水すると良いでしょう。
[土寄せ]
開花後に株元に土寄せをします。この土寄せは子房柄が地中に入りやすくするためです(図3)。
[病害虫防除]
コガネムシ類の幼虫が、さやを食害するときがあります。掘り取ったときに幼虫がいたら捕殺してください。次年度以降は、フォース粒剤などで防除対策をしましょう。
[収穫]
ゆで豆向き品種では、「郷の香」は開花期(株全体の半数に開花が始まったとき)からおよそ70日、「おおまさり」でおよそ85日のさやが十分に肥大した頃です。煎り豆向きでは、「ナカテユタカ」「Qなっつ」はおよそ80日、「千葉半立」はさやが膨らみ、網目がはっきりと見えた95日頃で、中の豆の皮が茶色に着色しています。
[食べ方]
電子レンジを利用した、煎り方を紹介します。乾燥さや50gを耐熱皿に並べ、500Wで1分半加熱した後、攪拌し、再度1分間加熱後攪拌し、さらに500Wで1分間加熱します。加熱の過程でかき混ぜることで、煎りむらを少なくできます。電子レンジの出力を低く設定し、加熱時間を長く取ることでも煎りさやができます。また、むき身では、水に10秒ほど漬け、紙封筒に入れて50gでは500Wで3分程度加熱します。いずれも分量が多い場合は調理時間が長くなり、少ない場合は短くなります。
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。
板木技術士事務所●板木利隆
