お役立ち情報コラム

生活に役立つ情報や営農情報をお届けします

ライフ 2023年7月

お米をおいしく楽しもう お米の魅力を正しく伝えたい

  私の店は飲食店とのお付き合いが多いですが、以前は安いお米を買い求めるお店が多くありました。
 彼らいわく、「同じ茨城県産コシヒカリだけれども、○○商店の方が安い」「客は米の味の違いなんて分かんないよ」「お米代を削って少しでも経費削減したい」など……。
 小池精米店がお付き合いしている飲食店には、『ミシュランガイド』に掲載されているお店がいくつかあります。うち2店舗はすし店です。『ミシュランガイド』で星を獲得するようなすし店はお米にどこまでこだわりを持つのか、ご紹介します。
 銀座のA店はお米の味に妥協しませんでした。
 まず私が、大将からどのようなお米が良いのか聞き取りをします。「粒は大きめがいい。もっちりしていて、しかしアルデンテ」。正直、何を言っているのかよく分からないと思います。しかし私はこれを聞いて「食感はあるけれどもパサついては駄目」と理解しました。そしていくつかのサンプルとして「里山のつぶ」(福島県)、「たかたのゆめ」(岩手県)、「さがびより」(佐賀県)を出します。大将が実際に使った後、感想を再度聞き取ります。「さがびよりは問題なかったが、時間がたつとダマ(塊)になる。そこが改善すればいい」。そこでいくつか最初に出したサンプル米をベースに、ダマにならないように改善したブレンド米を出したのです。
 渋谷のB店は「もみを保管して、発注のたびにもみずりして玄米にしてから出荷するような生産者から仕入れてほしい」という、産地の人にしてみればかなりハードルの高い条件を提示してきました。それでも条件を満たしたいくつかの生産者からサンプル米を試食して、ある生産者の「コシヒカリ」に決まったのですが……。
 さらに今度はその「コシヒカリ」の白米と八分づき(ぬかや胚芽が少し残っている米)の2種類をご所望されたのです。すしのシャリはぱらつきが大事です。しかし「コシヒカリ」は白米だけだとどうしても粘ります。そこで「コシヒカリ」のうま味を損なわずに、かつ握りやすさを求めて白米と八分づきをブレンドしました。
 こだわっているお店はお米に対してここまで桁違いなこだわりを有しているのです。こういった世界を知れば知るほど、私はお米の無限の可能性を感じることができるのです。

五ツ星お米マイスター●小池理雄

なくそう食品ロス 食品ロスを減らす、買い物前の一工夫

  最近、太陽光パネルと蓄電池を買って、マンションのベランダで使い始めました。晴天の日や昼間に発電した電力を、スマートフォンやパソコンの充電に使えるようになりました。いざ災害が起きたときの備えにもなるので心強いです。
 コロナ禍の初期の頃、英国やオーストラリア、イタリア、アイルランドなど、多くの国で家庭の食品ロスが減る傾向が見られました。なぜかというと、買い物前の行動が変わったからです。
 コロナ前は、いつでもどこでも何でも買うことができました。
 でも、コロナ禍では、例えばイタリアではスーパーに入れる人数が制限されたり、手袋をして買い物してくださいと言われたりするようになりました。  日本でも、買い物は3日に1回にしましょう、家族全員で行かないで1人で行きましょう、という呼びかけが某知事から出ました。  コロナ前に比べて、買い物に行きづらくなったのです。
 人々は買い物に関して、今までより真剣に考えるようになったのでしょう。大勢では行けないし、買い物に行ける時間が限られるとなれば、本当に必要な物だけを取捨選択して買わなければなりません。買い物に行く前に、冷蔵庫や家の食品庫に何がいくつあるか、賞味期限まではどれくらいか、などをチェックする。それに基づいて、買い物リストを作り、持っていく。すると、無駄買いや重複買いが減ります。
 ある全国紙の投書欄には、60代の会社員女性が、コロナ禍で、買い物に思うように行けなくなったので、冷蔵庫の野菜を使い切ろうと努力するようになったら食費が3割も安くなったとの投稿がありました。
 消費者が日々の食事をするための購買行動や消費行動は、次のように分けられます。①買い物前 ②買い物の最中 ③買った後の保管 ④調理 ⑤食事 ⑥片付け。
 環境配慮のキーワードである「3R(スリーアール)」のうち、最も優先順位が高くて節約になるのは「Reduce(ごみを出さない・廃棄物の発生抑制)」です。つまり、必要以上に買い過ぎないことがポイントなのです。
 家庭の食品ロスを減らすためには買い物前が勝負! です。

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

おいしく食べて美しく 夏の不眠症対策

 夏になると寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚めるなど不眠のお悩みはありませんか?
 夏に不眠になる原因は、室温と外気温の温度差により自律神経が乱れ、入眠に必要な体温低下も妨げられるからです。今回は、夏の不眠症対策をご紹介します。
 【1】GABAを含む食べ物を取りましょう
 自律神経には体を活発に動かすときに働く交感神経と、体を休めるときに働く副交感神経の2種類があります。発芽玄米、納豆などの発酵食品に含まれるガンマアミノ酪酸(GABA=ギャバ)には、神経の高ぶりを抑え、副交感神経を優位にし、自律神経を整えリラックスさせる働きがあるため、不眠の方にお薦めです。夜ご飯に納豆を取り入れたり、みそ汁を飲むと良いでしょう。
 【2】発酵食品・発酵調味料を取りましょう
 睡眠の質を上げるために腸内環境を整えると良いです。発酵食品、発酵調味料に含まれている乳酸菌が腸内の善玉菌の餌になり腸内環境の改善に役立ちます。腸では脳内の神経伝達物質「セロトニン」の9割が作られているため、腸内環境を整えると腸から脳への情報伝達、体内のさまざまな神経伝達に役立ち、自律神経が整うため睡眠の質が上がるでしょう。みそ、しょうゆ、キムチ、ヨーグルトなどに含まれています。おやつにヨーグルトを取り入れるのもお勧めです。
 【3】トリプトファンを取りましょう
 睡眠を促すホルモンのメラトニンは、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などのタンパク質、バナナなどに含まれるトリプトファンから作られます。トリプトファンを朝ご飯で取ると入眠を促すメラトニンの分泌が促進され、睡眠の質を上げる効果が期待できます。時間がない朝は、バナナ、またはヨーグルトだけでも食べると良いでしょう。
 規則正しい生活を送ることも自律神経を整えるために大切です。生活習慣や睡眠環境を整えながら対策をしていきましょう。

栄養士●吉田理江

捨てるところがないスイカ

 スイカが、原産地のアフリカからシルクロードを経て中国に入り、日本へ伝わったのは戦国時代の後期とみられます。当初は西から伝来したので「西瓜(せいか)」と呼ばれていました。
 江戸時代に入り、水分が多いところから「水瓜(すいか)」となり、『本朝食鑑』(ほんちょうしょっかん)という書物では次のような記述があります。
 「水瓜とは、すなわち西瓜のことである。水分の多いところから水瓜と名付ける」とあります。なにしろスイカの約90%は水なのです。
 夏は冷やしたスイカが大歓迎されるのは江戸時代も現代も同じです。問題はどこで冷やすかで、次のような川柳があります。
 大騒ぎ 井戸へ西瓜を 下女落とし  下女(女中)が井戸の中へ、どぼーんとスイカを落っことして大騒ぎ。夏の間中、どこの町内でも発生する大事件でした。
 江戸時代のスイカの利用法について、『本朝食鑑』には「全体に捨てるところは一つもない。皮および白肉は、煮て食べたり、香の物にしたりする。紅肉は生食する。種子は、よくいって食べる」とあります。
 スイカは利用価値の極めて高いウリでした。今でもスイカの皮は、煮たりぬか漬けにしたりする場合が少なくありませんが、これらは江戸時代以来の台所の知恵といってよいでしょう。
 『本朝食鑑』は、スイカの効果にも触れています。「景気を消し、よく小水を制す」とありますが、スイカの利尿作用は、現代でもよく知られています。その成分はシトルリンという物質で、スイカには同じような働きをするカリウムというミネラルも含まれています。スイカ特有の赤い色素はリコピンという抗酸化成分で、体細胞の酸化、つまり老化を防ぐ上で役に立つと同時に、がん予防効果の高いことでも知られています。同じような作用のベータカロテンも多く、強い紫外線のダメージを予防する上でも効果が高いです。

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫



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