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みんなの人権

働く喜びはチョークから

  現在、研修をする際には、黒板ではなくホワイトボードをもっぱら使っています。なぜ黒板を利用しないかというと、チョークを使うと手が汚れる、消すと粉が飛び散る、移動できないなどの理由が挙げられます。そういった不満に応えるように、ダストレスチョーク(粉の飛ばないチョーク)などの新商品を開発し、チョーク業界1位の実績を誇る゛日本理化学工業゛という企業があります。この会社の雇用形態については、『虹色のチョーク』(著者:小松成美、出版:幻冬舎)に詳しく書かれています。
 この会社の従業員の7割超が知的障がい者ということです。それを聞くと、どのようにしたら知的障がい者の多くを雇用しつつ、事業を存続させることができるのか、ということが気になります。そこには、「鉄の意思」と著者が表現している強い信念が存在していることです。それは、「働く喜び」について、障がい者と共に働く喜びを感じる経営を行うことです。
 大山泰弘会長は「人は仕事をすることで、人の役に立ちます。必要とされてこそ、生きていく喜びを感じることができる。職業をもって必要とされる喜びを知った彼らには、更に懸命に働いてくれます。そして、そんな彼らを毎日見つめてきた私こそ、彼らから、働く幸せ、人の役に立つ幸せを教えられたのです」と言っています。
 文字を読むこともできない、2桁以上の数が数えられない社員でも、例えば時計が読めなければ砂時計を準備する等、その人の持つ理解力に合わせて作業工程を設計すれば、健常者と変わらない能力を発揮する。そればかりか、゛かじり゛という不良品を瞬時に見分け、健常者なら20~30分しか続かない作業を長時間にわたって行う、というように健常者にはない集中力・識別力を発揮してくれる。そして、健常者の社員は『障がい者の面倒を見てあげる』という意識はなく、逆に障がい者から働くことの尊さ、喜びを教えてもらっている、ということです。
 この会社も現在に至るまでに紆余曲折があり、現社長が経営に加わった頃、チョークの需要低下に伴って、障がい者雇用の縮小・合理化を考えていたといいます。しかし、現場で知的障がい者と呼ばれる人たちと一緒に働く中で、彼らの仕事への姿勢、まじめさ、笑顔に触れ、素直に感動し、尊敬の念を抱いたということです。そして、障がい者雇用をを止めることはありませんでした。そのような時な、新商品▼「キットパス」の開発で業績を好転させることができたということです。
 著者が「なぜ、こちらの社員の方々は活き活きしているのですか」と社長に質問すると「自分も社会の役に立っているという自負が、社員のモチベーションを高めているのではないでしょうか」と、応えています。
 体に不自由なところや衰えがあっても、仕事を通じて、誰かの役に立ち続けたい。それは、障がい者にも、健常者にも、老いて衰えた人の多くにも共通する願いではないでしょうか。
 ゛働くとはどういうことなのか゛改めて考えてみませんか。

▼「キットパス」(環境固形マーカー)○ホワイトボード、ガラス等のつるつるした面でも使用でき、濡れた布などで簡単に消すことができます。

JA滋賀中央会発行『みのり』より

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