お役立ち情報コラム

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ライフ 2023年10月

お米をおいしく楽しもう 毎日おいしいお米を楽しむには

 家庭でおいしいお米を食べるには何をすれば良いのでしょうか? 皆さんにとって関心の高い内容だと思います。
 炊飯は水しか使いませんので、料理としては非常に単純です。しかし、素材の味がそのまま出ますので、ごまかしが利きません。故に奥が深い世界でもあるのです。お米は皆さんもよく食べる食材なのであまり難しい話になるとハードルが高くなってしまいます。それはお米を供給する側にとっては避けたいところです。難しい話とは次のような内容です。
①炊飯器具……じか火であれば土鍋・鉄鍋・ホーロー鍋・ガス釜など。電気炊飯器であればマイコンかIHか、さらには内釜の素材は何か。 ②水……浸漬のときと炊飯時の水の温度。水は浄水器を使った水道水か、ミネラルウオーターか。その場合の硬度はどれくらいか。浸漬時間や水切りの時間はどれくらいか。
 いかがでしょうか? このようにこだわり始めればきりがないのですが、中には意味のないこだわりもあります。例えば、米をとぐときに米粒が割れないように優しく洗うことは意味がありますが、それを突き詰めて米粒に衝撃を与えないようにボウルに水をためてその中に米粒を投入するという話があります。しかし、その違いが味の違いにつながることはありません。
 そう、炊飯はもっと簡単に考えていいのです。今はほとんどのご家庭で電気炊飯器を使う時代です。最近の電気炊飯器はよくできていますから、炊飯をしても驚くほどおいしくないご飯になることはありません。もしあるとしたら、それは選んだお米のせいです。そこでお米を選ぶ際には極端に安いお米は選ばずに、いつもより気持ち高めのお米を選びましょう。それだけで良いのです。
 おいしいお米を毎日楽しむには、負担にならないようなこういった簡単なアプローチで十分なのです。

五ツ星お米マイスター●小池理雄

なくそう食品ロス 個人商店で買い物をしてみよう

 兵庫県芦屋市と東京・六本木で食料品を扱う店「グランドフードホール」を運営する岩城紀子さん。彼女があるテレビ番組に出演した際、欧州には「Buying from artisans(職人から物を買え)」という言葉があると話していました。ハムはハム、パンはパンの個人商店で買うべきだと、幼い頃から教えられるそうです。地域の職人を大切にしなければ店も技術も失われてしまう。買うことで店を支えるのです。
 番組が放送されたのは2020年5月21日のこと。私は共感し「これからは個人商店で定期的に買い物しよう」と決意しました。肉は精肉店、魚は鮮魚店、お茶やのりは茶店で。どの店も互いに離れているから雨の日や忙しい日は面倒です。でも週に1回程度なら続けられます。通ううちに私の名前を覚えてくれました。
 鮮魚店は、豆腐店から手作り豆腐を仕入れています。数量限定なので、お造りなどの注文と合わせて電話で予約するようになりました。通ううち、少しおまけしてくれるようになりました。精肉店で買うとトレーがないのでプラスチックごみが減ります。容器を持って行くとポテトサラダを量り売りしてくれます。茶店で買うのりはパリッとしていて家で作る手巻きずしがおいしくなりました。
 スーパーやコンビニエンスストアだと1カ所で何でもそろうので便利ですよね。ただ、豊富な種類があるので無駄買いしがちです。レジに人がいても会話は少ないのではないでしょうか。
 明治学院大学の神門善久先生は著書『日本の食と農』(NTT出版)で「かつての八百屋や魚屋は、単に食材を売る場所ではなかった」と書いています。調理法や献立の相談など、そこには親密なコミュニケーションがあったのです。
 個人商店ならこれと決めた物を買いに行くので無駄買いが減り、プラスチック容器や包装のごみも減ります。たまには試してみませんか。

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

おいしく食べて美しく 食事でインフルエンザ感染予防

 秋から冬にかけては、インフルエンザが流行するシーズンです。今の時期にインフルエンザが流行するのは、空気中に浮遊しているウイルスが口や鼻から体内に侵入しやすくなるためと考えられています。マスクの着用や手洗いうがいなども予防には欠かせませんが、感染しにくい体づくりのためには食事も大切です。今回は、インフルエンザ予防にお薦めの栄養素を二つご紹介します。
■ タンパク質
 タンパク質は、ホルモン・免疫物質などの材料になります。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に含まれるタンパク質は、不足すると体力や免疫機能の低下などが起こるので注意しましょう。過剰に取ると余剰分は、尿と一緒に排出されるため、毎食、手のひらにのるくらいが目安量になります。朝、時間がない方は、牛乳を飲む、作り置きしたゆで卵を取るとタンパク質不足になりにくいです。おやつにチーズ、ヨーグルトを取るのも良いでしょう。
■ ビタミンA
 ビタミンAは、皮膚や目などの健康を守り感染症を予防する働きがあります。ニンジン、ホウレンソウなどの緑黄色野菜、レバー、ウナギなどに含まれるビタミンAは、皮膚の乾燥を防ぐ働きもあるため、美肌づくりにも欠かせない栄養素です。食事で取り過ぎる心配はありませんが、サプリメントで取り過ぎると余剰分が体内に蓄積され、頭痛などを起こす可能性があるので注意しましょう。脂溶性ビタミンのビタミンAは、油と一緒に調理することにより、体内への吸収率が高まります。緑黄色野菜を入れたみそ汁にごま油を加えると、こくが出るのでおいしく食べられるでしょう。
 インフルエンザにかかりにくい体づくりに必要なのはバランスの良い食事です。タンパク質、野菜だけではなく、米、パンなどの炭水化物もしっかり食べるようにしましょう。

栄養士●吉田理江

「とろろ芋」で若返る

 山芋(とろろ芋)の元気回復効果は古くから知られていて、平安時代の医術書などには「長く食べていると、目や耳が聡(さと)くなり、体も軽やかになって飢えに対する抵抗力も付き、寿命を延ばす」とあり、長寿食として貴族たちが盛んに食べていました。
 山芋をすりおろし、だし汁やみそ汁などでのばしたのがとろろ汁。これをご飯にたっぷりかけて食べます。
 いやー、うまいこと、うまいこと。
 あっという間に3杯くらいは軽くおなかに収まってしまいます。でも、心配はご無用です。
 少々食べ過ぎてもおなかにもたれないのは、アミラーゼなどの消化酵素が豊富に含まれているため。タンパク質とマンナンという、一種の食物繊維が結合した物で、炭水化物だけではなく、タンパク質の消化も助けてくれます。
 漢方では、乾燥させた物を「山薬(さんやく)」と呼び、精力の減退や疲労回復、不老長寿などに対する妙薬として古くから用いられてきました。江戸時代の『本朝食鑑』にも、「腎気を増す」とあります。衰えかけた精力の回復に役立つという意味です。
 アミラーゼの含有量は大根おろしより多く、このため生で食べると一緒に食べた他の食物の消化も助けることになり、栄養成分が無駄なく吸収されます。
 消化酵素は高熱を加えるとその働きが半減してしまうため、とろろ汁のように生に近い状態で食べるのが良いでしょう。
 井原西鶴の『好色一代男』の主人公である世之介は、60歳になったときに好色丸(よしいろまる)という船を仕立て、静岡県の伊豆から船出して女護島へ向かいます。
 このとき、船にスタミナ強化食を山ほど積み込んでいますが、その中には生卵と共に山芋がたくさん運び入れてありました。島に着いた世之介は島の若い女性たちに歓迎され、とっても長生きしたそうです。

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫



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