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2021年 12月

私の食育日記  おうちでお米作り

 子どもたちの幼稚園には田んぼがあり、土作りから、田植え、稲刈り、脱穀、そして最後は作ったお米での餅つきまで、体験させてくれます。昨年は田植えの大切な時期に幼稚園がお休みだったため、なんと苗が配られて、自宅のバケツでも栽培することに。毎日白いご飯をいただいておりますが、お米の作り方、その前にお米について知らないことがたくさんあると感じました。
 息子がもらってきた苗は餅米でした。普段食べているうるち米はでんぷんの成分であるアミロースとアミロペクチンが約2:8の割合ですが、餅米は100%アミロペクチンです。アミロースは、グルコースが直鎖状につながっていますが、アミロペクチンはグルコースが枝分かれしたような状態でつながれているため、独特の粘りが出ます。でんぷんを多く含む物は、この割合によって食感が変わります。例えば、ジャガイモよりサツマイモの方がアミロペクチンの割合が多いため、ねっとりとした粘りがあります。
 わが家の苗は、秋に向けて背が高くなり、まだかまだかと待っているとある日急にきれいな緑色の実が付いていました。子どもたちは大喜び。その後黄色くなり、穂先がたらんとお辞儀をしてきたので、稲刈り。ほんのわずかな量ですが、おうちでの稲刈りはまた新鮮さがありました。そして、逆さまに干して、その後が大変。家には専用の物はないので、脱穀・もみすりは1粒ずつつまんで、剥がしてみました。もみの中から玄米が出てくると、子どもたちにはお米ができた感動があったようです。
 米という漢字は数字の八が二つ合わさっていて、お米を作るのに八十八もの手間がかかるからといわれているそうです。また、もみ1粒から茶わん1杯分のお米ができるということも知って、あらためて、「お米って1粒ずつで見てあげないとね!」とお茶わんの中の1粒を大切にしてくれるようになりました。

岡村 麻純(おかむら ますみ)
1984年7月31日生まれ。お茶の水女子大学卒。大学で4年間食物科学を学び、食生活アドバイザーなどの資格を持つ。


野菜もの知り百科 チョロギ(シソ科イヌゴマ属)

 チョロギは、漢字で「長老喜」や「千代老木」などと書く縁起物の野菜です。1~3cmくらいの巻き貝のような白い塊茎を食用にします。蚕にも似ているので「草石蚕」とも書きます。梅酢に漬けて赤くし、正月の黒豆に添えるのが一般的です。
 夏目漱石は『吾輩は猫である』で、「始めて海鼠を食い出せる人はその胆力に於いて敬すべく」と書いています。芋虫のようなチョロギを最初に食べた人は誰でしょうか。中国華南原産で、日本へは江戸時代初期に伝わりました。19世紀末のフランスではクリーム煮などの食材として珍重されました。
 野菜の栽培には、種子で増やす種子繁殖と、株分けや挿し木などで増やす栄養繁殖があります。種子繁殖は他の花粉が掛かり、親と違う形質の子ができることがあります。栄養繁殖は親の遺伝子がそのまま子に伝わります。
 チョロギは塊茎で増やす栄養繁殖です。同じく塊茎で増やすジャガイモは「キタアカリ」や「シンシア」など世界中で品種改良が進んでいますが、チョロギはほとんど改良されていません。楊貴妃や坂本竜馬がもしチョロギを食べていたなら、それは私たちが今食べているものとまったく同じものかもしれません。
 チョロギの塊茎は通信販売でも簡単に入手できます。通信販売は米国も日本も種苗の商売から始まったといわれています。チョロギは強健な多年草で、一度植えると掘り残した塊茎から毎年芽が伸びてきます。
 チョロギはゆでてサラダ、炒め物、煮物、シチューなどにも利用できます。熱が加わるとユリ根に似た味になります。でんぷんは含みませんが、スタキオースというオリゴ糖を含んでいます。
 チョロギはバジルやローズマリーなどと同じシソ科の植物です。夏にサルビアに似た薄紫色で唇形の花を咲かせます。コンテナ栽培すれば、塊茎だけでなく花も楽しめます。

藤巻久志/種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。


あなたもチャレンジ! 家庭菜園 ニンジンのトンネル栽培 とう立ちさせない温度管理を

 ニンジンの発芽適温は15~25度で発芽には10度以上、生育適温は18~21度です。緑植物春化型といい、ある程度の大きさになり、低温に遭遇すると花芽が形成され、その後の長日と高温でとう立ちが始まる野菜です。
[品種]
 春まき用にはとう立ちがしにくい品種を選びましょう。どんな土壌にも適し、作りやすい「向陽二号」(タキイ種苗)、草勢が強く、芯まで鮮紅色になる「ちはま五寸」(横浜植木)などがあります。なお、暖地向きの「黒田五寸」はとう立ちの早い品種です。
[畑の準備]
 種まき2週間前に1平方m当たり苦土石灰100gをまき、30cm程度の深さに耕します。1週間前に、化成肥料(NPK各成分で10%)100~150g と完熟堆肥2~3kgを施し、土とよく混ぜておきます。
 条間15cm、株間15cmなどの穴開きマルチ資材の規格に合わせた70~80cmのベッド幅を作ります。マルチは早めに張って地温を上げておきましょう。
[種まき]
 温暖地では1~2月から種まきができますが、家庭菜園では3月まきが安心です。穴開きマルチでは、1穴に5~6粒まきます(図1)。
[トンネルの設置]
 換気作業を省力化するには穴開きのトンネル資材(農ポリ)を選ぶと良いのですが(図2)、普通の農ポリでは生育に従って裾を上げて換気をします。さらに、トンネル内の茎葉が茂り、いっぱいになればトンネルを外します。
[間引き]
 1回目は本葉2~3枚のときに2~3本、2回目は5~6枚のときに一本立ちにします(図3)。
[土寄せ]
 間引きと同時に土寄せを行い、さらに収穫期近くには、根の肩の部分にさらに土寄せして、根が緑に着色するのを防ぎます(図4)。
[収穫]
 根の径が4~5cmに肥大した株から順次抜き取ります。太り過ぎて裂根しないうちに収穫をします(図5)。裂根は急激に肥大する生育後半、畑が乾燥または過湿となる水分条件で起きやすいものです。。

※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。
板木技術士事務所●板木利隆


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