お役立ち情報コラム

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2021年8月

家族の健康 台風シーズンの不調「気象病」

 台風は、農業に従事する人にとって、作物の被害の心配や農作業がはかどらないなど、大きな悩みの一つでしょう。大雨の前に、頭痛や目まい、疲労感、関節痛や肩凝りや腰痛、その他の不調でつらい人がいます。これは「気象病」とも呼ばれています。これからの台風シーズンなど、前日に比べて気温が10度以上もしくは、気圧が10ヘクトパスカル以上も変動すると、気象病の症状が現れる人が増えます。
 気象病は体のいろいろな部分の状況変化で起こりますが、特に耳の奥にある内耳が気圧の変化に敏感です。乗り物酔いも内耳の揺れで起こる点で気象病に似ています。内耳の情報が脳に伝達されていますが、過剰な情報が伝わると、体は「こんな大変なときに、出歩くと危険がいっぱい、活動しない方が良い」と判断して、家にいて静かに寝たい体の状態になるのでしょう。
 そうはいっても、やるべき仕事はたくさんあるし、休んでもいられない日もあります。台風が接近し「体調が悪いけれど、今日は頑張らないと……」というときは、本当につらいですよね。
 対策としては、乗り物酔いの薬を飲むと楽になることもあります。市販薬がありますから薬局やドラッグストアでも入手できます。ただし、持病の悪化や症状が激しい場合には、主治医などの医療機関に相談してください。
 その他に簡単にできる対策としては、耳のマッサージがあります。耳を上下左右に引っ張る、耳を上下に軽く折るようにしたり、耳たぶも折るようにマッサージしてみると良いでしょう。耳の周囲の血行が良くなることで、内耳のリンパ液の滞りが解消されて、症状が治ることがあります。どこにいても手軽にできるので、試す価値はあります。
 関節痛や腰痛は、冷やさないことも大事です。まだ暑いですが膝など意外に冷えていることもあるので注意して、元気に過ごしたいですね。

健康科学アドバイザー 福田千晶

お米で健康 世界のお米について

 米は、トウモロコシ・小麦と並び「世界三大穀物」の一つに数えられ、世界各地で栽培されています。アジアを中心に欧州や米国など多くの地域で生産され、世界の米の約半分が中国とインドで収穫されています。
 栽培の仕方は地域の気候や地形などによって多種多様。山間部では棚田や焼き畑が見られます。雨水だけに頼った稲作や、山脈からの豊富な雪解け水を利用した栽培方法などもあります。米国では広大な土地に飛行機で種まきや肥料散布をし、大型コンバインで収穫するなど機械を活用するのが特徴的です。乾燥や治水などの水環境の厳しい地域では、陸稲を栽培している土地もあります。
 世界では10万種以上の稲が栽培されているといわれ、大きくは3種類に分類されます。日本でなじみ深いのはジャポニカ米ですが、世界で作られている米の約8割はインディカ米です。
ジャポニカ米:日本、中国の一部、朝鮮半島、オーストラリアなどで栽培。粒が短く小さめ。炊くと粘りとつやが出てかむと甘味を感じます。
インディカ米:東南アジアやインド、米国などに多く見られます。粒が細長く、加熱すると香りが出て粘りが少ないのが特徴です。
ジャバニカ米:イタリア、スペイン、ジャワ島や中南米などで栽培されています。粒が大きくあっさりとしていて粘りは少なめです。
 米の炊き方もさまざまで、日本で一般的な「炊き干し法」は、ジャポニカ米で多く使われる炊飯法です。一方、インディカ米は、米をたっぷりの湯で煮てから湯切りし水分を飛ばす「湯取り法」で炊き上げられています。その他、イタリアのリゾットやスペインのパエリアなど生米を油で炒めてから炊き上げる「炒め煮」する方法や、ちまきやおこわなど葉や布に包んだり筒に入れたりして蒸す方法などがあり、それぞれのお米の特徴に合った炊飯法で食べられています。

管理栄養士・フードスタイリスト 大槻万寿美

里山を歩けば  エゴノキ

 秋は実りの季節です。里山の木の実といえば、ドングリやクルミ、あるいは「いが」で覆われた甘い栗を思い浮かべる人も多いかと思いますが、雑木林を観察すれば、たくさんの種類の実を見つけることができます。初夏、下向きの白い花をたくさん咲かせるエゴノキもその一つです。花を樹木の下一面に落とし、夏から秋には2cmほどの卵形の堅い実を付けます。この実には、エゴサポニンという有毒な物質が含まれていて、口にすると皮が喉を刺激して「えごい(えがらっぽい)」ことが、エゴノキの名前の由来です。
 人はエゴノキを庭木としてめでるだけでなく、将棋の駒やつえ、こけしや傘の材料の一部として利用したり、実をつぶして洗濯せっけんの代わりにも利用してきました。釣り人にとっては、その種の中に寄生するエゴヒゲナガゾウムシの幼虫は魚の釣り餌として重宝されています。
 こんなに便利なエゴノキ、人間に利用されるために花や実を付けているように思ってしまうほどです。甘い香りを放つ花には、その蜜を求めてクマンバチやマルハナバチが寄ってきて、花粉を運んでくれます。その受粉によってできた実の中に種が一つ入っていますが、種を包んでいる実の部分に毒があるのを知っているのか、ヤマガラという鳥は、口ばしで上手に脂肪分がある種だけを取り出します。しかも、すぐに全部を食べてしまうのではなく、餌が少なくなる冬に備えて、地面や樹木の割れ目のある幹などに隠し蓄えるのです。そうして遠くに運んでもらうだけでなくて、なんとヤマガラによって取り出されたエゴノキの種は、そうでない種よりも発芽率が高く、うまく芽が出るそうです。
 樹木は自分で動くことができない代わりに、巧みな作戦で子孫を残そうと進化してきました。その目線に立ってみると、彼らがとても賢いことが分かります。エゴノキの生存PRのために私たちも利用されているのかもしれません。

●日本生態系協会

季節の室礼  重陽の節句

 9月9日は重陽の節句。あまりなじみのない行事ですが、五節句の一つに数えられます。
 節句は月も日も同じ数字が重なっていて、奇数は「陰と陽」でいうとめでたい陽数。9月9日は、一番大きい陽数が重なる日であることから重陽の節句と呼ばれます。
 重陽の節句は別名「菊の節句」。菊は古くから不老長寿の花で、漢方薬にも使われてきました。宮中や幕府では、前夜に菊に真綿をかぶせておき、当日に夜露を含んだその真綿で体を清める「着せ綿」という風習がありました。
 行事食は季節の栗ご飯や秋ナス、食用菊のお吸い物・酢の物・煮びたし、花びらを浮かべた菊酒をいただきましょう。菊花茶やカモミールティーもいいですね。
 実際に、各地で菊祭りが行われるのは11月の文化の日のころ。秋の花の菊ですが、さまざまな色や形の切り花が一年中出回っています。ピンポンマムといわれる丸い物、花先が美しくカールした物、ポップなビタミンカラー、シックでモダンな色合い……お供えの花というイメージはすっかりなくなりましたね。
 9月9日はぜひ菊を着せ綿で飾ってください。菊酒をイメージして杯を花器代わりにしてもいいですね。仕上げに、菊と杯が描かれた9月の花札を散らすと風情が出ますよ。

和文化講師●滝井ひかる


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