お役立ち情報コラム

生活に役立つ情報や営農情報をお届けします

2022年8月

家族の健康 老人性難聴

 9月20日は敬老の日です。元気に年齢を重ねられたお年寄りが増えています。しかし、加齢に伴い体の機能が衰えることがあります。自覚しやすいのは「老人性難聴」、つまり加齢以外に原因がなく耳が遠くなる現象です。
 老人性難聴は、耳にある音を感じ取る細胞の数が減少したり、細胞の機能が低下したり、音を聞く神経に衰えが生じることで、聞こえが悪くなると考えられています。特に高音部の音から聞こえにくくなります。低い音でゆっくり話すと聞き取りやすく、コソコソ話す内緒話は聞き取れてしまうので「年寄りの地獄耳」などと表現されるのでしょう。
 老人性難聴の特効薬はありませんが、補聴器の使用で聴力を補う方法があります。軽症のうちから聴覚刺激を入れておく方が、進行の予防になるともいわれています。
 家の中での生活ではあまり支障がなくても、広い農地では少し離れた場所にいる人の声が聞こえないと不便なことがあります。早めに耳鼻科の医師や補聴器販売店に相談し、農作業中でも使いやすい補聴器を使用することをお勧めします。声や音ではない動作での合図を決めておき、農作業中のコミュニケーション手段にすることも一案です。
 家族や周囲の人々は、高齢者との会話では、落ち着いた低めの声でゆっくりはっきり話すように留意しましょう。BGMなど他の音と会話の声が重なると聞き取りにくくなるので、大切な会話のときはテレビなどを消して、他の音が重ならないように配慮すると良いでしょう。自動車運転のときも、ラジオや音楽はつけないで、交通関連の音や運転に必要な会話だけに集中すべきです。
 老人性難聴の決定的な予防法はありませんが、栄養バランスの取れた食事、適度な運動を心掛け、ヘッドホンでの大きな音を避けることは予防につながる可能性があります。

健康科学アドバイザー 福田千晶

お米と日本人 おはぎ

 お彼岸は年2回あり、春の彼岸にお供えするのがぼたん餅。略してぼた餅。秋の彼岸には萩の餅ことおはぎを供えます。私が子どもの頃は家で作りました。粒あんときな粉の2色でした。
 まず、粒あん作り。自家栽培の小豆を洗ってゆでます。半農半漁の小村のこと、都会のお菓子屋さんのようにゆでこぼしをしてあくを抜くことはしませんでしたが、小豆がゆで上がってつぶれる頃に浮いてくるあくは丁寧にすくい取りました。だんだん煮詰まってくると、当時は貴重品だった砂糖を放り込み、混ぜながら煮詰め、鍋底に木じゃくしで一文字を書けるようになると、母はしょうゆを垂らしていました。甘味を強く感じさせることと、香りを付けるためだったようです。きな粉は前の晩にいって手回しの石臼でひいて作りました。これは子どもの私らの夜なべ仕事。石臼を速く回転させると、母に「隣のおばあさんが居眠りするように、ゆっくり回さんせ」と叱られました。ゆっくり回すと石臼は子どもには重い。「えらい(つらい)目せん(しない)とうまい物が食えんのやな」と子ども心に思いました。けれどもゆっくり回すと、きな粉は実に細かくひけました。それをふるってあん入りのおはぎにまぶしました。
 餅はもち米とうるち米を合わせて炊き、砂糖を混ぜ、すり鉢に入れてすりこ木で半つきに。この半つきの餅を丸め、粒あんを着せるのですが、子どもの私のおはぎは所々、半つきの白い餅がのぞきます。母は「夜船やッ」と言って笑うのでした。夜船はどこの岸に着くか分からん、と言うのです。
 ところで、私が指導している東北のスーパーで、この粒あんにブルーベリージャムやチョコレートを忍ばせたら思いの外よく売れました。老いも若きも嗜好は確実に昔と変わっています。食を楽しむ時代に成長しているのです。農業もそうありたいと思います。

伝承料理研究家●奥村彪生

お天気カレンダー 台風への備え

 9月は過去に大きな被害を出した台風の襲来が多い月です。戦後間もない1945年の枕崎台風、1947年のカスリーン台風、1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風、1961年の第二室戸台風。これらの歴史に残る台風は、いずれも9月に襲来しました。
 近年は地球温暖化の影響により、海水温が高い傾向が見られます。海水温が高いことは、台風が発達する条件の一つになります。さらに、温暖化により、夏から秋へ移り変わる時期が遅れ、台風を動かす上空の偏西風が弱まる傾向もあるといわれています。そうなると、日本付近で台風の進む速度が遅くなります。発達した動きの遅い台風が近づくと、風雨が強い時間が長引き、大きな被害につながる恐れがあります。台風への備えを今まで以上にしっかりとしておくことが大切です。

●日本生態系協会

季節の室礼  敬老の日

 9月の祝日といえば敬老の日。現在は第3月曜日ですが、かつては9月15日に定められていました。今も「老人の日」として残されています。
 では9月9日は何の日でしょう?五節句の一つで「重陽の節句」です。「お九日」と呼ぶことから「おくんち祭」の語源ともいわれています。
 別名「菊の節句」。菊は古くから不老長寿の花と信じられていました。宮中や幕府では、庭の菊に真綿をかぶせておき、翌朝その朝露を含んだ真綿で体を清めると長生きできるといわれていました。「着せ綿」という風習です。今に例えるとアンチエイジング美容ですね。
 重陽の節句には、栗ご飯をいただきます。菊の花びらを浮かべた菊酒も良い香りがします。刺し身に付いている菊は飾りとしてだけでなく薬味として、しょうゆ皿に花びらを散らして召し上がってください。
 9月のもう一つの祝日は秋分の日。昼夜の長さが同じで、彼岸の中日に当たります。お供えの花というイメージがあった菊も、近頃はさまざまな色や品種が増えましたね。
 「暑さ寒さも彼岸まで」といいます。残暑も感じられる9月は、丈夫で長持ちする菊を生けるのがお勧めです。菊は茎を手折るとよく水が上がります。

和文化講師●滝井ひかる



上へジャンプ