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今月の農業(2022年1月)

水稲

令和4年稲作のスタートに向けて
 毎年、農林水産省からは将来の農政の方向性をふまえた農業技術の基本が示されています。
 国の政策の中では、次の4項目が重要課題として掲げられています。ぜひ、ご一読の上、農業者・農村地域の立場で、将来の地域ビジョンや地域農業のすすめ方、また、我が家の農業経営の将来を考えてみましょう。

Ⅰ.食料自給率の向上

 多様かつ高度な消費者ニーズに対応した国内生産の拡大、需要構造の変化に対応した生産供給体制の構築が必要との文言が示されています。
 つまり、需要が低迷する米については、業務用・加工用・輸出用米等、需要に応じた価格・品質等の条件を満たし、かつ、収益を得られる品種・技術の開発普及を図るとされています。低コスト化の方策としては、ニーズに応じた多収品種の導入やスマート農業技術など効率的な作業管理、大規模乾燥調製施設の再編整備と麦・大豆など施設の汎用化による施設利用効率化など、農業生産の低コスト化、低価格化に向けた方策が重視されているようです。

Ⅱ.日本農業の体質強化・成長産業化に向けた取り組み

1.需要拡大

 諸外国から日本に輸入される農畜産物の品質や加工技術が向上する中で、国内産の農産物についても、新たな品種や技術開発による品質やブランド力など強みのある農畜産物を創出し、さらに、流通・加工分野も含めてコスト削減を進めることが求められています。つまり、外国産の農畜産物に負けない品質・価格で競争できる「産地力」を求められているということです。
 さらに、外国向けの新品種や品質、農薬の残留基準に対応できる病害虫防除体型の構築などの体制づくりを目指しているようです。
 また、国民の健康志向の高まりや消費者ニーズの多様化に対応して、機能性成分を多く含む農産物等、特徴を持つ新品種や新技術の開発、それらを原料とした新食品等の商品化を進めるなど、農産物の新たな用途の開拓が期待されています。

2.農業生産工程管理

 農業生産工程管理(GAP)とは、食品の安全、環境保全、労働安全、人権保護、農場経営管理等の持続可能性を確保するための全般的な生産工程管理の取組です。農業生産工程管理(GAP)を国際水準で実施することは、リスクの軽減だけでなく、経営改善、人材育成等にも有効であり、我が国の農業の国際競争力強化を図る観点からも重要視されています。

3.生産コスト低減

 「食料・農業・農村基本計画」に基づき、担い手への農地集積・集約による経営規模の拡大と、大規模経営に適合する省力技術(スマート農業)、多収品種や作期分散等の技術導入に取り組むとされています。
 そのために、生産技術の改善に意欲のある農業者の確保と、これら農業者への農地の利用集積等による農作業の効率化、経営・作業規模に見合った効率的な経営方式や生産技術体系等への見直しの必要性が示されています。

4.安定生産の推進

 安定生産のためには、病害虫被害の低減や適時・適量の施肥・適期防除等、生育に応じた適切な栽培管理が重要であることから、生育ステージを把握・予測することができる衛星画像やドローンセンシング、生育予測システム等を活用し、特に米との輪作やブロックローテーションで栽培する麦・大豆については積極的な導入を推進するとされています。
 また、 野生鳥獣を引き寄せない営農管理の徹底等 鳥獣被害防止対策や土壌分析等による土壌の状態の把握に努め、その状態に応じ、輪作や緑肥作物の導入等の作付け体系の見直し、堆肥等の有機物や土壌改良資材の投入等を推進することなどが示されています。

5.知的財産の保護・活用

〈地理的表示の登録等の推進〉
 生産者団体から求めがある場合には、地方行政機関等は、申請を行おうとする産品について、一般的な産品とは異なった地域ならではの特性、生産の方法のポイントとなる点について、技術的な観点から助言を行う等の支援を行うとされています。
〈種苗法に基づく育成者権の保護・活用〉
 我が国において生産者や消費者のニーズに即した優良な品種の利用を続けていく上では、海外流出防止も含め植物新品種を適切に保護していくことが必要であり、種苗法では、育成権者又は育成権者から許諾を受けた者以外の者がその種苗の生産、譲渡等を行うことを禁じています。
 また、優良な品種が無断で海外に持ち出されたりしないよう、登録品種の管理の適正化を図り、登録品種種苗への品種名称使用や登録品種であることの表示などの周知を引き続き徹底するとされています。
〈農業者の自家増殖に関する許諾契約の定着〉
 農業者の自家増殖に育成者権が及ぶ植物に属する登録品種(省令別表第3)は、農業者の自家増殖を認める際に、その旨の許諾契約を結ぶことになります。
 また、在来種(地域で代々受け継がれてきた品種)や品種登録されたことがない品種、登録期間が切れた品種の利用には、種苗法上の制限がありません。
 なお、令和4年4月1日に施行される改正種苗法では、登録品種の増殖は許諾に基づき行うこととなるため、育成者権者が許諾を必要とする登録品種について増殖を行おうとする者は、育成者権者から許諾を得ることが必要になります。

Ⅲ.資源・環境対策の推進

 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」について、令和3年3月に中間取りまとめが決定され、2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料の使用量の30%低減、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大する等の目標を掲げ、持続可能な食料システムの構築に向け、中長期的な観点から、生産から消費までの各段階の取組みとカーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進するとされています。
 また、GAPの取組みなどを通じた環境への負荷低減等、持続可能な農業生産や省エネルギー・省資源化、バイオマスの活用等を推進するとともに農業生産活動とのバランスを取りながら地球温暖化対策や生物多様性保全といった問題にも分野横断的に対応するため、行政機関、普及指導センター、生産者団体等の連携の強化を図りながら以下の取組みを推進するとされています。

1.農薬が環境に与える負荷の低減

①総合的病害虫・雑草管理(IPM)の推進
 病害虫発生予察情報を活用した適期防除に加え、圃場環境の整備、様々な防除技術の適切な組合せによる化学合成農薬だけに頼らない耕種的防除等、総合的病害虫・雑草管理(IPM)を推進し、農業者によるIPMの実践を支援するとされています。
②食品安全性向上のための工程管理
 食品の安全性を向上するには生産段階から消費にいたるまで、科学的根拠に基づくリスク管理の徹底が重要です。食品の安全性が危惧される有害物質として、かび毒や自然界に存在するカドミウムなどがあり、それらの汚染防止のための規範を策定し、その実施を求められています。
 また、リスク管理や安全性を向上する対策の実施状況を生産工程管理(GAP)の記録として保存することが求められています。産地の信頼度向上のためにぜひ実行しましょう。
③スマート農業技術を活用した化学農薬の使用削減
 化学農薬の使用量低減を推進するため、スマート農業技術の活用により農薬散布の効率化、ドローン等を活用したリモートセンシングによる病害虫管理、ドローンによる農薬のピンポイント散布、AI等を活用した病害虫発生予察、除草ロボット等の技術の開発と導入・普及をすすめるとされています。これからの新技術に注目しましょう。
④農薬の適正な使用・管理の徹底等
 農薬を安全かつ適正に使用することは、農作物の安全確保及び農業生産の安定のみならず、国民の健康の保護及び生活環境の保全という観点から極めて重要です。
 「農薬危害防止運動実施要綱」を参考に、農薬取締法ほか関係法令を遵守し、農薬の安全かつ適正な使用に努めるとともに適正な保管管理を徹底し、使用現場においては周辺環境への配慮を徹底しましょう。

2.肥料が環境に与える負荷の低減

① 土壌診断に基づく適正施肥や効率的施肥の推進
 局所施肥技術や土着菌根菌の活用によるリン酸肥料の節約など施肥低減技術の導入・実践、土壌診断に基づく適正施肥の取組みを促すとともに、化成肥料や配合肥料を使用する場合、リン酸・加里の土壌への過剰蓄積が顕著となっている地域においては、これらの成分をあらかじめ抑制した肥料の利用を促すなど、土づくり専門家との連携及び土づくり専門家リストの活用により、土壌診断に基づく土づくりの取組みをすすめましょう。
②バイオマス活用の推進
 バイオマスの高度利用に資する技術開発、地方自治体によるバイオマス利活用構想(都道府県・市町村計画及び産業都市構想)の策定や構想の実現を推進し、多種多様なバイオマス利用技術を活用した効率的な事業化を推進するとされています。
 特に、耕畜連携の体制づくりや堆肥品質の改善等を進め、堆肥の有効利用、物流性や散布性等を向上させたペレット堆肥等の普及に向けた取組みを推進するとともに、メタン発酵消化液(バイオ液肥)や、メタンガス化により得られたエネルギーの余剰熱、発生する二酸化炭素の温室利用など、生産コストの低減技術の農業利用を推進するとあり、注目していきましょう。
③スマート農業技術を活用した化学肥料の使用量低減
 施肥の効率化を図るためのスマート農業技術の活用が提示されています。具体的には、土壌や生育診断等のデータに基づく施肥管理、ドローンによるピンポイント肥料散布等の技術開発と導入・普及により、化学肥料の使用量低減を推進するとされています。
④肥料の適正な使用・管理の徹底等
〈法令違反の未然防止に向けた取組 〉
 汚泥肥料については、肥料取締法に違反する事例が複数確認されていることから、「汚泥肥料中の重金属管理手引書」に基づき指導を徹底している。特殊肥料については特殊肥料の届出の受理及び立ち入り検査における留意事項について依頼文書により指導を徹底するとあり、違法な肥料には注意しましょう。
〈BSEまん延防止のためのリスク管理措置の徹底〉
 動物由来たん白質を原料とする肥料は、牛の飼料への誤用・流用を防止し、BSEの感染の遮断に万全を期す観点から、家畜等の口に入らないところで保管・使用する旨の表示を義務付けと「肥料取締法の規程に基く表示等が義務付けられています。
〈硝酸性窒素の溶脱の防止〉
 作物に利用されない肥料成分は環境負荷の原因となるため、肥料の効率的な利用により過剰な施肥を抑制するための各種取組を進めています。
〈肥料取締法の改正〉
 令和元年12月に「肥料取締法の一部を改正する法律」が成立・公布され、土づくりに役立つ堆肥や産業副産物由来の肥料の活用とともに、農業者のニーズに応じた柔軟な肥料生産等が促進されるよう抜本的な改正が行われているので改正内容について確認しておきましょう。

3 有機農業の推進

 有機農業に関する技術の研究開発及びその成果の普及の促進に加え、雑草対策などの生産技術の実証・成果の普及、栽培技術向上に向けた研修等を推進するとあります。ぜひ、注目していきましょう。

4.地球環境問題に適応する農業の推進

 CO2ゼロエッミション化の実現に向けた農業分野における地球温暖化対策のさらなる推進、農業機械が環境に与える負荷の低減、省エネルギー・省資源型農業の推進、農業分野における生物多様性保全の更なる推進などがきめ細かに示されています。

5.プラスチック資源循環の推進

 農業用プラスチック等の適正使用、使用済みプラスチックの排出抑制、被覆肥料の被膜殻の流出防止などが指摘されています。

Ⅳ.食品の安全性の向上等

 農産物の安全性を向上させるための工程管理の推進や有害物質等のリスク管理措置の徹底、農業生産資材の適正な使用・管理の徹底などの項目について記載されています。

排水対策

 麦類は、出穂後に湿害にあうと品質が著しく悪くなります。降雨後の表面水が畦面に1日以上滞留しないよう排水対策を徹底しましょう。特に、積雪のあとは融雪水がいつまでも残ることのないよう注意してください。

施  肥

 12月~1月の追肥がまだの場合には遅れないよう施用してください(元肥に「麦パンチ」「麦将軍」「麦用セラコートR2500」を施用した場合には今回の追肥は不要です)。
 穂肥の時期は、小麦「びわほなみ」は2月上中旬、大麦「ファイバースノー」とビール麦は2月下旬です。

除  草

■MCPソーダ塩

 カラスノエンドウ・スズメノエンドウ等が毎年多発する圃場では、MCPソーダ塩が効果的です。使用時期は、麦の幼穂が約1㎜、草丈20~25㎝位の頃です。分げつを抑制する効果があるので、茎数を確保してから散布してください。小麦の生育が平年並みの場合には2月末~3月上旬頃に、雑草によくかかるように散布してください(雑草発生前では十分な効果が期待できません)。また、散布直後に降雨にあうと効果が低下します。高温、晴天時に散布すると効果的です。

■ハーモニー75DF水和剤

 スズメノテッポウ、1年生広葉雑草などに効果的です。ハルタデ防除の散布適期は小麦の幼穂形成期~穂ばらみ期です。小麦の生育が平年並みの場合には2月末~3月中旬頃です。播種時にハーモニー細粒剤Fを使用した場合にはこの薬剤は使用できません。

■バサグラン

イネ科をのぞく1年生雑草に適用、雑草3~6葉期が散布適期です。
*農薬は容器のラベルにある記載事項をよく読み、正しくご使用ください。
*詳細は、令和4年産麦栽培ガイドラインをご覧いただくか、当JA最寄りの支店担当者に気軽にご相談ください






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