お役立ち情報コラム

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ライフ 2024年12月

お米をおいしく楽しもう 私たちの暮らしを守る田んぼ

 みんな、「田んぼ」って知っているよね。言うまでもなくお米を育てる所だね。田んぼは自然の中にあるけれど、当然、自然にできたものではなく人間がお米を育てるために考え出した「設備」なんだよ。
 でもその田んぼがあるおかげで、実は私たちの暮らしにさまざまな影響を及ぼしているんだ。例えば、田んぼにはいろいろな生き物や植物が住んでいる。一説には植物プランクトンなどの微生物から大型の鳥類まで、田んぼでは6000種を超える生き物が暮らしている、といわれているんだ。私たち人間だけでは食べ物がなく、生きていくことはできません。野菜や牛、豚、鶏、魚といったさまざまな生き物によって支えられているよね。これを「生物多様性」というのだけれども、まさに田んぼでそれが実現できているんだ。
 また、田んぼは、激しい雨が降ったときも、川の急激な増水や土砂崩れを防ぐことができるんだ。雨水をゆっくりと地中に染み込ませ、地下水としてしっかりと蓄えるので、「自然のダム」といわれているよ。私たちが飲む水も、水田を経由してダムや川に流れ込んでいるんだ。
 夏の暑い時期には、田んぼに水が張ってあることで周囲の気温が下がるので、田んぼは「自然のクーラー」ともいわれているんだ。
 このように、田んぼは人間が作り出したものだけれども、自然を壊すことなく、むしろ環境を守る役割があることが分かるよね。そういった役割も世界から認められて、日本では、4カ所の水田地域が「世界農業遺産」に登録されているんだ。
 お米を育てるだけではなく、さまざまな役割を持っている田んぼだけれども、みんながお米を食べないと田んぼは減る一方。みんながお米を食べることは、自分たちの住む環境を守ることにもつながるんだね。

五ツ星お米マイスター●小池理雄
小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、
2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。

なくそう食品ロス 餅

 「餅」というとお正月のイメージですが、2014年4月ごろに岩手県一関市へ行ったとき、飲食店で何種類もの餅が出てきて驚きました。「餅膳」といって、あんこ餅やずんだ餅、くるみ餅、ごま餅、納豆餅など、9種類ぐらいの味付けの違う餅を楽しむことができます。
 一関市では、農作業や季節の節目、入学式や卒業式、冠婚葬祭など、さまざまなときに餅つきをしてきました(一関市公式観光サイトより)。江戸時代、一関地方を治めていた伊達藩の命で、毎月1日と15日に餅つきをして神様にお供えする習慣がありました。神様には白い餅を供える一方、貧しい農民が食べるのは、くず米に雑穀を混ぜた「しいなもち」。これをなんとかしておいしく食べようと工夫したことが、独自の「餅」文化を広めたのだそうです。
 昔は「鏡開き」といって、お供えした鏡餅を1月11日に下ろし、たたいて割って食べる習慣がありました。2段に重ねた餅の丸い形が昔の銅鏡に似ているから「鏡」だそうで、「割る」という言葉は縁起が悪いので「開く」という言葉を使ったとのことです(農林水産省公式サイトより)。
 今ではパック入りの切り餅や丸餅をスーパーで買う人も多いかもしれませんね。サトウ食品株式会社は、それまで15カ月だった餅の賞味期限を2016年より24カ月まで延長し、食品ロスの削減に貢献しました。どのような工夫をすることで賞味期限を延ばしたのでしょう?
 小さな餅をくるむ包装材に、酸素を吸収して水分の蒸散を抑えるフィルムを使いました。それにより、外からの酸素の浸入を防ぎ、餅の水分を保てるようにしたのです。
 以前は鮮度保持剤を入れていましたが、このフィルムを使うことで鮮度保持剤は不要となり、ごみも分別しやすくなりました。このような企業努力のおかげもあって、食品ロスも少しずつ減っているのですね。

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)
『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。

お天気カレンダー たこ揚げ

 お正月にはたこ揚げて、こまを回して遊びましょう。
 昔ながらのお正月遊びといえば、たこ揚げを思い浮かべる人も多いと思います。実は、昔の気象観測にはたこが使われていました。今では「高層気象観測」といって、観測器を付けた気球を飛ばして、上空1万mくらいまでの気温や気圧、風などを観測しています。この観測により、上空5000m付近に寒気が流れ込んだ、寒気が抜けた、ということが分かります。冬は雪の降り方が、夏なら雷雨の起こりやすさなどが判断できる、とても重要な観測になります。
 1920年代から40年代までは、たこに観測器を付けて揚げて、上空の観測をしていたこともあります。最高3000mまで観測器を付けたたこが揚がったということです。すごいたこですね。天気を正確に予報するために、なんとかして上空の観測をしたいという努力がうかがえる歴史的な事実です。


気象予報士・防災士 檜山 靖洋(ひやま やすひろ) 1973年横浜市生まれ。
明治大学政治経済学部政治学科を卒業後、印刷会社に就職。
1999年に気象予報士を取得し気象会社へ転職。 2005年からNHKの気象キャスターに。
朝のニュース番組「おはよう日本」の気象情報に出演中。

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