Agri Navi

水稲・麦・大豆などをご案内します

今月の農業(2023年3月)

水稲

気象変動に負けない稲作は健苗づくりと適期田植から!!

 米の登熟時期に高温が続くと、乳白粒や心白粒などのいわゆる白未熟粒の発生が増えるといわれていますが、この時期に地力窒素が乏しく肥効が不足すると、さらに白未熟粒の発生が多くなります。
 気象の温暖化や田畑輪換による水田の乾田化によって、水田の地力が低下しています。一昨年までに当JAが実施してきた土壌分析の結果から、359か所のうち地力窒素(可給態窒素)の値が十分満たされた地点は15%程度しかなく、大半の地点では地力窒素が不足状態という結果が出ました。
 さまざまな気象変動にも負けない近江米の安定生産と品質向上のためには、土づくりはじめ、きめ細かな基本技術を励行しましょう。

主な品種の播種と田植適期の目安

播種は日平均気温が10℃以上、田植は日平均気温15℃以上が適期です

*湖辺・平坦地域では、播種は4月上旬以降、田植は5月上旬以降となります。
*中山間地域では、播種は4月中旬以降、田植は5月中旬以降となります。
*浸種中に水温10℃以下になると種子の発芽が悪くなるので注意してください。
*収量・品質に影響しない田植時期の晩限は5月下旬頃です。(出穂の晩限は8月末)
*強風の日や低温の日に田植えを行うと苗の活着が悪く、極度の苗傷みや生育遅れになりやすいのでご注意ください。
 (健全な稚苗の活着温度は12.5℃以上)

*コシヒカリやキヌヒカリは、出穂期の高温による心白・乳白などの白未熟粒の発生が増加しています。
 これらの品種の播種・田植は別表の適期範囲内でなるべく遅い時期に行ってください。
 (稚苗・中苗ともなるべく5月15日~5月下旬の田植えが望ましい)
*「みずかがみ」は、適期の範囲で早めに植え付けてください。

播種作業の手順

*温湯消毒は60~62℃の温湯に10分間浸漬してください。
 (温度・時間を正確に)

*袋のまま温湯に浸漬するときは、中まで温湯が届くようよくかき混ぜてください。
*温湯消毒終了後は、直ちに冷水をかけ流し、袋の中心部までかき混ぜながらよく冷やしてください。
*冷却後はそのまま引続き浸種してください。
 (水温10~20℃で6~7日間、積算温度100℃が目安)
*温湯消毒後、種籾を一時保管する場合には、種籾を十分に冷却し、確実に風乾してください。
*ご注意!!冷却や乾燥が不十分なまま、種籾を放置すると非常に発芽が悪くなります。
 …ひどいときは、苗箱一面にかびが発生したり、種子が腐敗します。

*催芽は30~32℃で1~2日、ハト胸程度にする。
 (伸ばしすぎないよう注意)

苗の種類ごとの育苗の管理

苗箱の並べ方

*苗箱を並べる前にハウスの置き床を水平にならしておきます。
*苗箱は水平に隙間なく並べてください。
*ハウスの側面には10㎝程度の隙間をあけてください。
*苗箱が傾いたり、苗箱の底面と置き床の間に隙間があると、苗の生育が過湿や水不足で生育不揃いになったり、枯死する場合があるので注意してください。

苗箱の正しい置き方(稚苗・中苗とも共通)

緑化のしかた

*育苗器で出芽してから緑化に移すときは、新芽が緑色を帯びるまでは苗に直射日光をあてないよう寒冷紗等で軽く遮光してください。
*苗床は水平に均平し、苗箱の底と床土の間に空間ができないようにします。
*気温が低い日に出芽苗を緑化ハウスに移すときは、寒冷紗で遮光する前の潅水は省きます。
 (低温と過湿が続くと苗の生育が非常に悪くなります)

温度管理

*硬化ハウス内の気温〈昼20℃・夜15℃〉が適温です。
*夜温10℃以下になると草丈が伸びにくいので、低温が予想されるときは保温資材で被覆してください。
*温度が高すぎると徒長し、カビの発生や植え傷みしやすいので最高気温は30℃を超えないように注意してください。
*夜間冷え込みそうな日や霜注意報が発令されたときは、早めにハウスを閉め、保温資材で被覆してください。
*保温は、ラブシートなど不織布と寒冷紗の2重にすると効果的です。

換気

*晴天日の日中はハウスを換気し、温度を調節してください。
 (ハウス側面下部からスキマ風が入ると苗の高さに差ができるので、畦波シートなどで地面から30~50㎝程度の高さで風よけを設置します)

水管理

*潅水は午前中にたっぷり行いますが、床土に水分が十分あるときは潅水を控えてください。
*雨天・曇天日や低温日には潅水を控えるか、やらないでください。
*硬化期後半に、水不足の兆候が現れたら、午後3時頃にたっぷり潅水してください。
*ハウス周辺部や苗箱の周縁は乾きやすいので丁寧に潅水してください。
*寒冷紗の上から潅水すると生育ムラになりやすいので注意。

中苗の苗代発芽方式の管理

*トンネルで育苗する場合は、播種後の苗箱を直接苗床に並べても問題ありません。
*トンネル育苗では、温度変化が大きく、外気温の影響も受けやすいので、出芽が揃うまでは、苗箱の上に保温シートなどで保温に努めてください。
*苗箱表面に内張の保温シートが隙間なく張り付くと出芽不良が発生しやすいので注意。
*出芽揃いを確認したら、トンネル内の内張り保温シートは直ちに取り外します。
*トンネル内温度が最高35℃、最低10℃の範囲となるようトンネルに穴をあけて温度を調節します。35℃以上では裾を上げて通風します。
*水は、一旦、苗箱の上面いっぱいに水を張って苗箱に十分給水し、その後は苗箱の床下まで水位を下げます。
*低温や霜が予想される日にはトンネルの外から保温シートをかけてください。
*トンネル開放後は異常低温や霜の恐れのあるときは事前に深水にします。
*田植えの数日前にはトンネルを全開して苗を外気に慣らしてください。

参考①

育苗ハウスの準備は早めに行いましょう

●ハウス辺の整備
*ハウスの外縁はスキマ風などで苗の生育が悪いので、地面から30~50㎝程度の高さで風よけを設置してください。
 (あぜ波シートなどで囲いを作るか、ハウスのアーチに30~50㎝程度の高さで直管や針金を水平に通し、サイドビニールの内側下部にビニールフィルムを地面との隙間なくつるします)
*側面ビニールの巻き上げ器(通称:クルクル)を点検し、巻き上げロールは確実に固定してください。
*ハウス周辺に雨水や潅水の余剰水がたまらないよう排水溝さらえを行いましょう。
*ハウス周辺の雑草防除と不用品を整理しましょう。
ハウス内の苗置き床の整地
*苗箱を配置するとき苗箱が苗床に水平に密着するよう、床土を均平にします。
 (土が固いときは、細かい山砂などを薄く散布すると均平しやすくなります)
被覆ビニール・継ぎ手金具・ハウスバンドなどの点検・補修
*長年使用しているハウスでは、金具が緩んだり地際部のアーチパイプが腐食してないか、ビニールに破れがないか、ハウスバンドの緩みなど、確認しましょう。

参考②

潅水と換気の省力化にはプール育苗が便利

①置き床をできるだけ水平にします。
②高さ5~7cm程度に湛水できるプールを作ります。
③置き床に育苗箱を並べ、必要に応じてプールに水を入れます。
④ハウス内の温度はできるだけ低めに、通常は夜もサイドビニールは開放する。
*最高温度 25℃以下 
*最低温度 4℃以上
 (4℃以下が予想されるときは深水にする)
水管理
①緑化苗を配置し、床土がやや乾き始めたときにプールに水を入れ始める。
②水を入れる時間帯は、朝、昼、晩、いつでもよい。
③次回の水入れは、床土が乾燥し始めたら水を入る。
④水の深さは床土表面の高さくらいで、苗が水没しないようする。
温度管理
①プール育苗では、水による保温効果によって、低温障害を受けにくいがハウス内の温度が高いと急激に徒長しやすいので注意する。
②プールに水を入れた後は、日中25℃以下を目標に、できるだけ低めの温度で管理する。
③晴天日にサイドビニール等を締め切ったままにすると、ハウス内の温度は早朝から40℃以上の高温になり、苗が徒長しやすいので注意する。
④最低気温が4℃以上の場合は、夜間もサイドビニールを開放状態にする。
⑤夕方、サイドビニールを閉めた場合には、翌朝早め(晴天の場合は日の出前)に換気する。
⑥最低気温が4℃以下になりそうな時や、霜注意報が出ている時は、夕方早めにサイドビニールを閉め、苗が水没する程度の深水にする。
その他の注意
*「置き床を均平化する」
*「苗を運搬する前にプールの水を抜いておく」
苗箱に水を多く含んでいると、苗箱が重く、運搬作業が大変です。
移植の数日前にプール内の水を抜き、運搬作業の前に苗箱を傾けて、箱内の水を切ってから運びます。℃以下が予想されるときは深水にする)

参考③

育苗中の異常対策

出芽不良
*催芽温度が高すぎる、または温度不足、播種床の乾燥または過湿、育苗用土が粘質すぎる、直張りシートが密着しすぎるなどの原因が多いので、予想される原因を除去し、しばらく様子を見ても出芽しない場合は播きなおしましょう。
苗の生育不揃い
*苗箱の施肥ムラや箱底と床面の密着が不十分による水分ムラで発生するので、一度、床土に水を十分浸み込ませてから、数日間様子を見ましょう。
日焼け
*温度や水の管理が不十分だと、日焼けで枯死するので、2~3日待って回復しない場合は播きなおしましょう。
白化現象
*出芽苗を緑化ハウスに移したとき、長時間直射日光を受けると発生しやすくなります。白化した葉は最後まで緑化せず出葉が遅れ、移植後も多少生育が遅れますが、使用可能です。
カビや細菌による立枯れ、苗いもち
*苗の病害は、種子、育苗器材、水、土など、伝染経路が多様なので、発生後は効果的な防除があまり期待できないので、なるべく発生させないよう次の対策を行いましょう。
①無病種子を使う(種子更新を行う)
②種子の比重選(塩水選)を行う
③厚播きを避ける
④罹病したワラや籾殻を育苗箱の敷きワラとして利用しない
⑤適正な温度管理(高温・低温・過乾・多湿をさける)
⑥過繁茂、軟弱苗は早めに処分する
*いもち病に罹病した苗を本田に植付けると、病原菌が圃場全体に拡散するので、いもち病の症状がでた苗を本田に持ち込まないように注意しましょう。

実肥

 小麦「びわほなみ」の実肥は、4月下旬頃に硫安を10a当たり20㎏程度施用してください。茎数が少ない場合には施肥量を半減してください。穂肥に麦用セラコートR2500を施用した場合には実肥は不要です。「びわほなみ」増収体系で3月に尿素10㎏/10a施用した場合には4月下旬に生育状況を見て硫安10~20㎏/10a施用してください。
 大麦「ファイバースノウ」は、元肥・追肥に化成肥料による分施体系の場合には4月上旬の止葉出葉期に化成肥料201を10a当たり10㎏施用してください。ビール麦の実肥は不要です。
*施肥基準の詳細は令和5年産栽培暦をご確認ください。

排水対策

 麦の湿害は土壌中の水分過多による酸素不足により発生し、収量だけでなく品質が著しく劣化します。特に、透水性の悪い粘土質の土壌では湿害が出やすいのでご注意ください。また、茎立ちとともに一段と湿害の影響を受けやすくなりますので、排水溝の管理を徹底してください。
 稲作が始まると、水田の用水路に水が流れ始めます。麦の圃場に漏れ出さないよう早めに確認してください。

赤かび病防除は2回必須

 病害虫発生予報を参考に実施してください。小麦、大麦ともに1回目の防除は開花初めの時期です。2回目の防除は、1回目防除実施後7~10日後です。
*小麦「びわほなみ」は出穂期が早いので遅れないようにしてください。必ず2回散布、赤かび病の発生が多いときは3回散布が必要です。






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