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みんなの人権

善人の沈黙は悪人の残酷さより悲劇である


 2018年8月8日、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が亡くなられました。これに合わせるように、「学校では教えてくれない差別と排除の話」(著:安田浩一、出版:皓星社)の中で、翁長さんのとったある行動の原因の一端を知ることができました。

 その行動とは、自民党に属していた翁長さんが政府に対抗し、辺野古への基地移転に反対するようになったことです。2013年1月27日沖縄県内の全41市町村の首長らが銀座に集まって、米軍の新型輸送機・オスプレイの配備に反対する集会を日比谷公園で開催。その後、銀座でデモ行進を行いました。当時、これ以上基地の負担を増やさないという点で、沖縄では与党も野党も同じ思いをもっていたということです。翁長雄志那覇市長(当時)を先頭に、党派を超えて、市長や村長が集まったのです。

 このデモに対して、在特会(在日特権を許さない市民の会)や同会を支持する人たちが、銀座の沿道に集まり、「売国奴」「国賊」という言葉を投げつけ、「オスプレイ配備、賛成」「沖縄人は中国人のスパイだ」といった発言を続けたということです。その後、記者会見で翁長さんは、こう語りました。「自分が政府に反発し、新基地建設に反対することを決めたのは、銀座のデモで自分らを国賊呼ばわりしている人たちを、周りの人たちが平気な顔をして見守っていたからだ」と。つまり、翁長さんは、ヤジを飛ばしていた在特会の人たちのことよりも、彼らを見て見ぬ振りをしていた沿道の人たちなど、沖縄に無関心な人たちを目の当たりにして、基地移転に強く反対するようになったと言うのです。

 目の前で差別されている人がいるのに、それに無関心であるということは、その差別を容認していることと同じではないでしょうか。いじめにおいても、当事者の周りにいる大勢の傍観者的態度をとるクラスメートが変わらない限り、いじめがなくならないのと同じように思えます。

 多くの差別や排除は、無知と誤解から生じるとすれば、それらをなくすためには、まずは実態を知ることが重要です。本を読んだり、データを調べるなど知識を得ることも重要になってきます。さらに大切なのは、差別や排除の現場に足を運ぶことです。そこで、被差別当事者の生の声を聴くことが重要になってくるのではないでしょうか。

 差別や排除を考えるときに、注意しなければならなのは、差別されている人が「かわいそう」という同情心だけで考えないということです。かわいそうな人がいるから「差別はダメ」では、しょせん「他人事」になってしまうように思います。「かわいそう」と思う前に、まずは、差別や排除により、傷ついて人がいるという状況を許さないことが大事です。その上で、もし差別を受けている人と入れ代わったら、自分はどんな気持ちになるだろうと想像してみる。想像力を働かせて、当事者意識を持つことが大切です。そのことで、差別する側とされる側(あるいは差別に反対する側)を一緒にして、「どちらにも問題がある」「どっちもどっち」だとするのではなく、「差別者を擁護するいかなる理由もない」という強い意志を持つことにつながっていくのだと思います。

 差別はなくならないし仕方のないことだ、とあきらめるのではなく、どうすれば差別などせずに人々が暮らしていけるのかを、あらためて考えてみませんか。

JA滋賀中央会発行『みのり』より

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