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みんなの人権

他人と比較しない


 2019年のノーベル化学賞が吉野彰さんに贈られることになりました。このノーベル賞を授与するスウェーデンでは、“保育園に待機児童はいない”とのことで、それをタイトルにした本が出版されていましたので、手に取ってみました。著書は『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』(著者:久山葉子、出版:東京創元社)です。本書は、1歳児の娘の理想の子育て環境を求めて東京からスウェーデンに移住された久山さんが、ご自身の子育てと移住の経験を綴ったエッセイ集です。この中で、考えさせられたのが、就学前学校の保育方針というもので、次の5点が挙げられています。
就学前学校は、子ども一人ひとりがこれらの能力を発達させることに努めなければならない。
 ① 寛容さ、敬意、連帯感、責任感
 ② 他人の状況に配慮したり、共感したりできる能力。そして、他人を助けたいという気持ち
 ③ 日常に存在する生き方への課題や道徳的ジレンマに気づき、自分で考え、意見を持つ能力
 ④ 性別、民族、宗教等の信仰、性的指向、障害に関わらず、人間には全員同じ価値があるということへの理解
 ⑤ 生きるものすべてへの敬意と、自分の周囲の環境に対する配慮
 以上の点については、私たちが行っている人権研修・啓発そのものではないかと思います。
 詳しくは分かりませんが、スウェーデンでは人権研修会というものは存在しないんじゃないだろうか。なぜなら、幼いころから誰もが、人として大切な価値観を身に付けるように教育を受けているのですから。
 例えば④の具体例として、「先生も親も『男の子でしょ、泣かないの』とか『女の子なんだからもっと・・・』という言い方は決してしない」などが紹介されていて、その結果ということではありませんが、スウェーデンでは女性の就業率が80%を超え、女性議員の比率も45%(2013年 経済協力開発機構OECDの発表)となっています。
 また、「『○○くんは××なのに』と言うような、人と比べる言い方もタブーである。同じく『お兄ちゃんなんだから』『もう○歳なんだから』といった世間の平均値を基準にした発言もしない」とも紹介されています。これは、子どもの個性を認める育て方をするのなら、その子のみを見つめるべきであり、他人との比較はやってはいけない、という価値観から導き出されたものかと思います。
 その他にも、様々な事例が紹介されていますが、このような例を見ていくと、「それはスウェーデンだからできるのであって、日本では無理だ」という声が聞こえてきそうです。確かに、国の制度を変えることは容易ではないでしょうが、「世間の平均を基準」にする、「他人との比較」をしてしまいがち、といった自分自身の価値判断にもう少し自覚的になることはできるのではないでしょうか。間違いに気づき、それを改めるということは、個人レベルでもできる方法だと思うのです。


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