お役立ち情報コラム

生活に役立つ情報や営農情報をお届けします

ライフ 2024年4月

お米をおいしく楽しもう お米と日本人の深い付き合い

 日本人がお米と付き合い始めたのは、今から約3000年前。まだ日本人が動物を狩ったり、山で植物を採ったりして暮らしていた、そんな時代から稲作は始まったんだ。
 食べ物を採る時代から自分たちで作る時代になったけど、日本は外国に比べて国土は狭く、山が多い土地なので、たくさんの食べ物は作れませんでした。それでも日本人が暮らせたのはお米のおかげ。
 お米はとても効率の良い作物で、種もみ1粒をまくとたくさんのお米ができます。今から1300年前には1粒が10~20倍にも増えていたんだって。一方で麦は同じくらいの時代で3~4倍程度だったといわれているんだ。
 田んぼでは毎年お米ができるけれども、これって実はすごいことなんだ。普通は同じ作物を同じ土地で毎年作ることは難しいんだよ。土地の栄養分が減ってしまうからね。だから一度、その土地は休ませるのだけれども、そうなるともっと広い耕地が必要になってしまう。ところが田んぼは水を張っているため、毎年お米を作ることができるんだ。だから狭い地域でも多くのお米を栽培でき、日本人の命をつなぐことができたんだよ。
 お米を使った食べ物ってみんなの周りにたくさんあるよね。家での朝ご飯や給食のご飯はもちろん、おすし、おにぎり、丼、ぬか漬け、お餅、大福やおはぎなどのスイーツ、せんべいやおかきといったお菓子。これって昔からある食べ物で、みんなが大好きなものばかり。こうやって昔からある食べ物は全部お米がなければ成り立たないよね。
 お米の栽培が始まると、支配者が生まれました。その呼び名は時代によって大王、天皇、将軍、大名とさまざまだけども、権力者の力はいかにお米が取れる土地を支配していたかで決まっていたんだ。そんな国は、日本だけ。
 こうやって見ていくと、お米と私たち日本人との付き合いが、いかに古く、そして深いかが分かりますね。 

五ツ星お米マイスター●小池理雄

なくそう食品ロス  食品ロスはなぜ減らさなければならないの?

 2024年、第6回となる恵方巻きの売れ残り調査を実施しました。2019年から毎年、節分の夜に小売店を回り、売れ残っている恵方巻きの本数を数えるというものです。
 今年は高校生や大学生なども含め、10代から60代までの有志が調査に協力し、大手コンビニエンスストア101店舗を回りました。  ところで、多くの人が恵方巻きの売れ残りなんて人ごとだと思っていませんか? 店が捨てるんだから、自分たちには関係ない、と。決してそんなことはありません。
 なぜなら日本では多くの自治体が、コンビニやスーパーの売れ残りを「事業系一般廃棄物」として収集するものの、最終的には家庭ごみと一緒に焼却処分しているからです。東京都世田谷区ではこの処理費に1kg63円の税金を費やしています(2023年4月、世田谷区発表)。
 日本全体では、一般廃棄物の処理費は年間2兆1449億円です。これは、われわれが納めた税金の結集です。一般廃棄物のうち40%が生ごみと考えれば、約8500億円が単に食べ物を燃やすために使われています。生ごみの80%以上は「水」です。燃えにくいものを、わざわざ膨大なエネルギーとコストをかけて燃やしているわけです。
 今回調査したコンビニ101店舗では、1750本の恵方巻きが売れ残っていました。もし全国のコンビニ5万5713店舗で同様に残っていたとすれば、7億881万6442円分の恵方巻きの食品ロスが発生していたことになります(著者調べ)。
 食品ロスは、なぜ減らさなければならないのか。経済損失であり、環境負荷であり、そのお金があれば雇用や医療、教育、福祉など、他の有用なことに使えたはずだからです。
 捨てるコストは食料品価格に含まれています。食品ロスを大量に出す限り、われわれ消費者は、食品価格と税金と、ダブルで余計な費用を負担し続けなければならないということを肝に銘じておきましょう。

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

おいしく食べて美しく 食べ物で花粉症対策

 新しい環境と生活リズムが変化してストレスを感じやすい時期になりました。新生活のストレス対策にお薦めの栄養素を三つご紹介します。
■ ビタミンC  
野菜、果物に含まれるビタミンCは、抗ストレスホルモンの合成に欠かせない栄養素です。ストレスを感じると、体内で抗ストレスホルモンが分泌され、ビタミンCが多く消費されます。ビタミンCは、コラーゲンを合成するのに欠かせない栄養素です。ストレス対策だけではなく、美肌づくりにも役立ちます。過剰に取っても余剰分は尿と一緒に排出されるため、毎食取るのが好ましいです。食後のデザートに果物を取り入れると良いでしょう。
■ マグネシウム  
バナナ、ヒジキ、ナッツなどに含まれるマグネシウムには、神経の興奮を抑える働きがあるため、ストレス対策には欠かせない栄養素です。時間がないときの朝食やおやつにはバナナを食べると良いでしょう。ヒジキのふりかけをご飯にかけると手軽にマグネシウムが取れます。
■ タンパク質  
肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などのタンパク質に含まれるアミノ酸の一種トリプトファンは、幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質のセロトニンの原料となります。このセロトニンが不足すると精神のバランスが崩れ、ストレスを感じやすくなるため、毎食タンパク質を取ると良いでしょう。トリプトファンは体内で作り出すことができません。食べないダイエットをするとトリプトファンを摂取できないため、そのようなダイエットは控えましょう。朝、時間がない方は、ヨーグルト、牛乳などを朝ご飯に取り入れるのもお勧めです。  しっかり食べてストレスに負けない体づくりをしたいですね。 

栄養士●吉田理江

身近な草木 和ハーブ入門 セキショウ 和のハーバルサウナ

 仏教伝来とともに広がりを見せてきた日本のお風呂文化ですが、現代のように肩まで湯につかる温浴が一般に普及してきたのは江戸時代中期以降といわれています。植物の茎葉や枝などを直接燃やしたり蒸したりして、高温の蒸気を立たせる「ハーバルサウナ形式」が日本の薬草風呂のルーツ。そして古来、用いられてきたのが、実はセキショウ(石菖)です。
 清らかな谷川や水辺に群生する常緑多年草で、名の由来は「石や岩に張り付く菖蒲(ショウブ)」から。「菖蒲」の文字からアヤメの彩り華やかな花を想像するかもしれませんが、アヤメとセキショウは別種です。
 春から初夏、うららかなハイキング日和の水辺で、淡黄色の小さな花を探してみましょう。とても地味な花姿なので観察には虫眼鏡が必須です。そしてよく発達した根茎を横に出して水中の岩に絡み付かせ、ひげ根を伸ばして群生しています。
 知名度はそれほどありませんが、濃緑色の細い葉や根茎部をちぎったり、高温で蒸したりすると、青く爽やかな芳香が広がります。抗真菌性があり、冷えや関節痛などに向くことから重宝され、現在も大分県の鉄輪温泉ではセキショウの蒸し風呂を堪能できる温浴施設もあります。
 旧暦5月5日の端午の節句には、「尚武」や「勝負」と掛けて「ショウブ湯」につかる風習があり、セキショウが用いられてきましたが、その後に中国由来の庭草であるショウブに取って代わられたようです。ちなみに、推古天皇の時代、この季節には薬狩りをしていた記録が残っています。私たちも、いにしえの人々に倣ってセキショウを浴剤にしたり、ヨモギと一緒に束ねて和ハーブボールのように蒸して温めたりしながら使うのも良いでしょう。心身を清める香りとその薬効は、春から夏の薬湯にぴったりです。

水辺に生えるセキショウ
植物民俗研究家/一般社団法人和ハーブ協会副理事長 平川 美鶴 (ひらかわ みつる)



上へジャンプ